2000年5月24日、fieldにアルタンが来た!

 この日アルタンは京都で初めてのコンサートをライブハウス磔磔でやっていた。fieldから磔磔は割合に近いし、fieldでこのチケットを扱う事もあって、プロモーターにはあらかじめアピールはしていたものの、最後は本人達次第でしょう、と半信半疑で待ちかまえていたのだ。いつもセッションをする一角を「予約席」にして、あらかじめ居たお客さんにも席を空けてもらって、万全の体勢で待っていると、本当に彼らはやって来てくれた!まず、マネージャーのトムさんから挨拶され、「ワシはこの前までアルタンのコピーをしていた、10年来の大ファンだ」と横に居た人に通訳してもらったら、トムさんは「〜イミテーション〜ナンチャラカンチャラ」と笑ってたので、何かジョークを言うたのだろうとワシも笑った。くそお!英会話勉強しとくんやった!え?パブのおやじやから英会話できるやろうって?なにくそ!これから勉強するわい!

 皆さん席についてはくれたが、何か手持ちぶさたにしているぞ。緊張と不安で舞い上がっていたワシは自分トコがパブであることも忘れておったわ。 そーやそーや、まず酒や!注文を聞くと、マレードさんがワイン、ダヒさんが普通のビール、他の人は全員ギネスだ!よっしゃーとりあえずカンパーイ!じゃ。ワシも自分のギネスを手にしてカンパーイ!

 磔磔からいっしょに流れて来たお客さん達もfieldセッション常連の若者達も彼らを遠巻きにしてジイ〜っと見ているだけなので、この雰囲気はイカン!と思ったワシはマジックペンを握りしめ、去年カワベさんにアイルランドで買って来てもらったバウロンをマレードさんの前に差し出しサインをお願いする。

 おお!マレードさん自ら「ALTAN」と絵文字まで書いてくれたぞ!そして、他のメンバーにもペンを回してくれて、マネージャーのトムさんまでもみんなサインしてくれた!この大宝物と化したバウロンを前に、ワシはダーモッドさんの横に強引に割り込み記念写真!記念写真!

 むむむ、そういう一連のノリが終わってしまうと、また彼らは彼らだけでしゃべり始めたじゃあないか!誰か英語ぐらい話せるやろ!何か話しかけろ話しかけろ!ワシが隅でイジけていると、英語の堪能なトウヨウが何か話しかけているぞ。よしよし、ぶちょーもがんばってダヒさんに自分のギターを見せたりなんかして話かけている。いいぞいいぞ、その調子や。ん?ワシか?ワシはただただビビッていただけなのだが、マレードさんが横山に何か話しかけてるのを見て取った。横山はフィドル弾く格好をしている。この場面を見逃さなかったワシは走ってfieldのオンボロフィドルを取りに行って横山に素早く手渡したのだ。

 音出しっぺはシンゴだった。奴はfieldのバンジョーを手にすると早速チューンを弾き始めた。横山も手渡したフィドルを弾き始めた。ぶちょーもギターで合流し、ハタオもやって来てフルートで入って来た。そんな若者達の演奏をほほえましく聴いてくれているアルタンの方々、というほほえましい図がしばし続いていたので、ワシはこのスキにと、自分のブズーキを奥に取りに行って、ブズーキのキーラン・クランさんに楽器の裏にサインをしてもらった。ただの嬉しがりやな、まったく。

 そんな時に誰からともなく、鵜飼さんに「名古屋弁のゲール語の歌を歌え〜!」と声がかかる。まあ、白状すると言い出しっぺはワシなのだが、ひるまなかった鵜飼さんはエライ!この時歌詞を持っていたのもエライ!ワシはブズーキを持ったままだったので、とりあえず、フェアウェル・トウ・エイリンの伴奏をし始めた。意を決した鵜飼さんは歌いだした。実はこの曲、アルタンのひとつ前のアルバムに収録されているのだ。鵜飼さんはこのバージョンのゲール語歌詞を聞き取っていたのだ。一瞬、マレードさんの視線が歌っている鵜飼さんに釘付けになり、マレードさんも合わせて一緒に歌い出した!!!ブズーキで伴奏しているワシの目の前でマレードさんが歌っている!ワシはその瞬間頭がクラクラし、後頭部が痛くなった。あまりに感激すると頭が痛くなるんや!初めて知った。鵜飼さんは結局全コーラス歌い切った。マレードさんは身を乗り出して鵜飼さんの手を握りしめて何かしきりに言うている。リウさんに通訳してもらった所によれば、この曲の歌詞はマレードさんのお父さんが作ったものなのだそうだ。そんなことみんな全然知らんかったわけで、それを聞いて鵜飼さんは感激のあまり腰が抜けて床に崩れて座り込んでしまいもう涙目だ。エライぞ!ウカキョン!  

 それで、マレードさんも俄然ノリが出たのか、自分の楽器ケースからフィドルを取り出した。おお!さっきまでステージで弾いていたフィドルだあ!それだけで皆から歓声が上がる。はじめはタラタラとマズルカあたりから始まった。マレードさんもニコニコ合わせてくれている。そのうち、ぶちょーとハタオがお得意のリールのセットをやりだした。アルタンが以前のアルバムでやっていた曲も含まれているヤツ。リールになるやマレードさん、俄然前のめりに腰でリズムを取り出した。また、傍らに置いてあった、これまたfieldのオンボロボタンアコーディオンを隣のダーモッドさんに自ら手渡している。ダーモッドさんはこのアコーディオンんおあまりのオンボロさに笑みを浮かべながらもセッションに入り出した。トウヨウがディジリドゥーでリズムを刻み出したのをマレードさんが気に入って、Eのキイなら大丈夫やな?とトウヨウに念を押して、自分からリールを弾きだした。トウヨウもブイブイとディジリドゥーで頑張る。

  

 そんな時に、キバが登場、キバは一昨年ドニゴールへ行った時に、とあるパブでマレードさんと居合わせセッションをしたことがあるというヤツ。それだけのヤツをマレードさんは覚えていた!!ハウワユーなんて言うてる!キバはこの日は日本の胡弓を持って来ていて、マレードさんやキーラン・トウーリッシュさんらが、興味深そうに胡弓を触っている。キバがその胡弓で日本の曲を弾いたので、モリリンも張り切って三線を取り出して来て沖縄民謡を歌った。キーラン・トウーリッシュさんはいたく三線に興味を示したようで、しばらくつま弾いていたかと思うと、良く聞くとジグやんけ。キーラン・トウーリッシュさんの三線ジグをきっかけに、セッションはまたまたアイリッシュ・チューンにもどり、キバもフィドルを弾きだした。

 

 だんだん場内はダンスチューンの嵐の様相。キーラン・トウーリッシュさんが横山の弾いていたフィドルをぶんどった!よっしゃ!と気を見たぶちょーが自分の弾いていたギターをダヒさんに手渡した。それで、ワシも一番ヒマそうな顔をしていたキーラン・クランさんに自分の弾いていたブズーキを手渡した。よっしゃあ!これで、アルタン全員が楽器を持った格好になったやん!ハタオ、キバ、あおれあおれ!で、ものすごい演奏が目の前で繰り広げられていくのであった。いやもう、ワシは頭痛を通り越して、こんな光景が自分の店で繰り広げられている事に現実感が湧かない。夢と現実の差なんてこれぐらいしかないのか、と思うぐらい、この光景はまるで夢の中のようなのだ。ダーモッドさんもよくfieldのあのCのボタンが引っ込んだまま戻らなくなるボロボロのアコーディオンを弾いてくれたものだ。苦笑いしてたけど・・・・。

 最後にワシは憧れのマレードさんと2ショットで写真を撮ったが、あまりの緊張で顔が著しくこわばってしまったのだった。

 

 本当に、ものすごい緊張と、興奮と、歓喜だった。こんな感激って滅多に味わえないんやろうな。関わってくれた皆さん、本当にありがとう。プランクトンの井内さん、もちろんアルタンの皆さん、本当に素晴らしいひとときをありがとう。  field スザキ

 

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